[インタビュー]佐倉ゆきさん(羊毛フェルトブランド「merry☆drops」 運営・羊毛フェルト作家)
[インタビュー実施日]2019年6月
[場所]ネット上にて
今回は羊毛フェルト作家の佐倉ゆきさんへのインタビューです。merry☆dropsというブランドで、数々のイベントに出展されている佐倉さん。ハンドメイド通販サイト花盛りの中、イベントでの対面販売への想いや、作品を通じたお子様たちとのエピソードなどをお聞きしました。
(2019.06 インタビュー・構成・編集 北山メル )
佐倉ゆきさん(merry☆drops )
◆数年前、北海道から埼玉に転居されたそうですが、夏の埼玉は暑いでしょう?(笑)
暑いです!
最初の夏は空気が暑くて呼吸するのもきつかったです。
◆ 快適な仕事環境のために、工夫されていることはありますか?
仕事部屋は室外機置き場がなくて灼熱だったのですが、昨年窓枠エアコンを購入してから快適な空間に生まれ変わりました。
◆埼玉の夏にエアコンは必需品ですね(笑)
北海道は冬の室内がとても暖かいと聞きますし、年中快適にハンドメイドできそうですね。
そういったことも含め、羊毛フェルト作家として活動する上で、北海道と埼玉で違いを感じることはありますか?
北海道は室内だと年中快適です。
北海道では、冬は雪があるのでイベント時の移動が大変です。
埼玉は年中巨大スーツケースが使えますが、北海道は冬場積雪のため使えないので大変です。
関東の最も良いところは、大きなイベントに宿泊なしでいけるところです。
飛行機、宿泊、荷物を送るための費用がかかりませんから、いろんなイベントにチャレンジできます。
また人口が多いので、「猫好きさん」「ドール系」などといったワンテーマのイベントも、入場前から行列ができるくらいにお客様が集まり、すごく活気があります。
◆北海道と関東の羊毛フェルト人気に違いはありますか?
北海道も関東も同じ感じですね。その辺は差を感じたことはなかったです。
◆なるほど。全国一律、と言ってしまうと拡大解釈かもしれませんが、羊毛フェルトは人気なんですね。
「羊毛フェルト」とは、どういうものを使ってどのように作るものなのですか?
毛糸になる前の、綿のような状態の羊の毛を使います。
それを、先がギザギザになっている羊毛フェルト専用の針で刺して、形を作っていきます。
◆針でチョンチョンと刺していくことによって羊毛をフェルト化させ、形作っていくのですね?
そうです!
◆綿のような状態からあんなにカワイイ作品ができるなんて、本当にすごいですね!
布地を使ってぬいぐるみやテディベアを作る者として思うのですが、羊毛フェルト作品は、作っている方が進行状況を目で見てわかるのがうらやましいです。(笑)
だんだん形になってくるところや、どこを作っているのかがわか流というところが、初心者さんでも楽しめますよね!
布地ものは、ひっくり返して綿を詰めて、初めて「ああ、こういうことしていたんだ……」という方が多いかと思います。
◆佐倉さんが羊毛フェルトを始めたきっかけはなんですか?
手芸屋さんで、パンダとカエルができる羊毛フェルトキットを偶然見かけ、買って作ってみたことです。
針は何本も折れるし、手に針は何度も刺さるし、でき上がったパンダは血まみれで。(笑)
でもひとつ作ると楽しくなって、もっと作りたくなってしまったんです。
◆出会いですね!
手芸屋さんで見つけたということは、羊毛フェルトを始める以前から、手芸に親しんでいたのですか?
小学校低学年から編み物、刺繍、アメリカンフラワー、テディベア……いろんな手芸をしていました。
◆子供の頃から手芸に親しんでいたんですね。
多くの中から羊毛フェルトを選んだのはなぜですか?
針を刺すときの「サクッサクッ」という音と、感触が好きなんです。
これは、他の手芸にはないものです。
◆お話を聞いているだけで、刺す音を聞いてみたくなるし、やってみたくなりますね!
アトリエで手芸を楽しんでいる小学生からも「羊毛フェルトやったことあるよ」「やってみたい!」という声をよく聞きます。
人気なんですよねー!
うれしいです!「羊毛フェルトが身近になったなぁ!」と思います。
自由な発想で、どんどん楽しんで作品を作ってほしいなぁと思います。
◆佐倉さんはmerry☆dropsとしてイベントでの販売を精力的に行なっていますね。
今までどのようなイベントに参加しましたか?
関東近郊ですと、デザインフェスタ、ヨコハマハンドメイドマルシェ、HAND ART Marché、I DOLL、arteVarie、おけがわ手づくりマーケット、minahanです。
北海道ですと、札幌の地下歩行空間、札幌ファクトリー、テレビ塔、小樽などです。
◆たくさん出展なさってるんですね!
ハンドメイドも通販サイトが盛んですが、対面販売の魅力はどのようなところですか?
対面だと直接お客様の反応を感じられるのが魅力です。
あとは通販特有のイメージの違いがなく購入していただけるのがいいですね。
◆逆に、イベント出展や対面販売で苦労な点はありますか?
荷物とトイレですね。
7泊8日用のスーツケースとリュック、大きな旅行鞄を持っての電車移動が本当に大変です。
大きいイベントだとトイレも混んでいるので、その間留守にしてしまうのが大変ですね。
◆トイレに行っている間、ショップはどうしているのですか?
お手伝いの方をお願いしてる時はその方にお任せします。
一人の時はお隣の出展者さんに「ちょっとお手洗い行ってきます」
みたいに声をかけて、ダッシュでいってきます。
◆出展者さんもトイレ激混み問題はツライですね。出展者さんじゃないとわからない苦労ですね。
切実です。
◆イベントは土日や連休時が多いので、ご家族のご理解もありそうで、ステキですね。
平日のイベントは、子どもの預かり先がないので出られないんです。
土日は家族が協力してくれるので、とても感謝しています。
◆佐倉さんは子育て真っ最中だそうですが、羊毛フェルト製作について、お子さんはどのようにおっしゃっていますか?
下の子は、私の作品だけは大切にしてくれているようです。
死んでしまったウサギをモデルにした羊毛を飾ってあるんですが、たまにこっそり抱っこしています。
上の子は、歌い手の天月※さんの大ファンで、天月さんのキャラクター「正宗くん」のブローチを作ってあげたら、大喜びでライブにつけていっています。
二人とも作家活動には興味津々で、作業をよく見にきますね。
[補足]
※天月:歌い手。俳優。声優。メジャーレーベルから音源をリリースし、武道館コンサートも行なっている。国内外で人気。
◆お母さんとしても、作家としても、とてもうれしい反応ですね。
羊毛フェルトを製作する上で、一番大切にしていることは何ですか?
楽しい気持ちで製作することです。
動物作品が多いので、イライラした気持ちで作ると怖い顔になったり、悲しいと作品も悲しい顔になったり。
そんなときは、ひたすら土台を作っています。
◆どういった作品をつくっているのですか?
犬、猫、モルモット、うさぎ、等の動物をモチーフにしたキーホルダー、ブローチ、動物立体などです。
◆どれもカワイくてステキですね!
猫の作品もたくさんありますが、猫はお好きですか?
猫、大好きです。
近所に耳をカットした地域猫※がたくさんいるんですが、すごーく可愛いです。
3年かけて仲良くなりました。
名前をつけて呼んでいますが、いろんな名前があるみたいですよ。
近所の猫好きさんとも仲良くなりました。
うちは犬猫禁止物件なので、飼えなくて残念です。
[補足]
※耳をカットした地域猫:去勢手術や避妊手術が済んでいることの証明のために、手術中に耳の先をV字や水平にカットした地域猫。ピアスをつける場合もある。
地域の人々に「この猫からはもう子孫は増えない」ということをお知らせするためと、麻酔をして開腹してみないと去勢・不妊手術をしたかどうかわからないことが多いので、地域猫に無駄な負担をかけないための処置でもある。
猫の耳に負担は全くない。
◆うちの2匹の猫たちもイヤーカット系です!ボランティアさんを介して地域猫の里親になりました。
うちの猫たちもきっと、あちこちでいろんな名前で呼ばれていたかもしれませんね。
仲良くなった猫をモデルにすることもありますか?
あります!よく作ります。
◆そういう時は、どんな思いで作られるのですか。
仲良くなった子たちの表情を思い出しながら、ニヤけながら作ります。
その子たちがカワイイって言われながら買われていくときは、すごくうれしいです。
◆今まで印象に残ったお客様や、お客様とのやりとりなどはありますか?
野外のイベントで、お客様の大きなわんちゃんが私のブースを見て怯えていて、どうやらたくさんの動物に見られていると思ったらしくて。
あまりにもそのわんちゃんがカワイくて、印象に残っています。
猫を10匹飼っているお客様が、「ミケちゃん」「モモちゃん」と、猫の名前を呼びながらお買い上げくださったのが印象に残っています。
◆わんちゃんが怯えていたって、おもしろいですね笑 リアルだったんですね。
猫好きのお客様など、佐倉さんの作品がとても愛されているのを感じます。
羊毛フェルト作家として、今後どのように活動していきたいですか?
テーマのあるイベントにも積極的に出展していきたいです。
8月24・25日に東京都立産業貿易センター台東館で「にゃんだらけ」というイベントがあり、初めて出展します。
◆猫好きの佐倉さんとしては、ご自身も楽しみなイベントですね。
さて、最後の質問です。
佐倉さんが作った作品を旅させるとしたら、行き先はどこで、どんな旅がいいですか?
田代島がいいなぁと思います。猫たちとのふれあいの旅をさせてみたいです。
[補足]
※田代島:宮城県石巻市本土から南東約15kmに位置する島。人口80人ほどに対し、数100匹の猫が住んでいることから、「猫島」として知られる。
島内には猫神社もあり、国土交通省が選定している「島の宝100選」にも選ばれている。
◆さすが、猫好きな佐倉さん。実現するといいですね!
ありがとうございました。
インタビューアー・北山メル
あみぐるみ、ぬいぐるみ作家。オーガニック素材などにこだわりを持ち製作。オリジナル作品ミランコビッチ君に旅をさせ「ぬいぐるみの旅」を楽しんでいる。
コミュニティカレッジ「下北沢大学」のポスター、フラッグ、DMのあみぐるみをデザイン・製作。
またライター業も手がけている。
NPO法人日本ぬいぐるみ協会アーティスト会員 日本あみぐるみ協会会員
Twitter:https://twitter.com/_mayuchel_
note:https://note.mu/mabuma